実践するために
「期待収益率」と「ボラティリティ」
「期待収益率」と「ボラティリティ」がわかれば、資産形成は自分でできるようになります。自分が10年後に500万円の資産形成をしたいと考えたとします。今自分がまとまったお金を持っていないとしたら、毎月いくら積み立てていけばいいのか。まず目標金額が500万円。期間が10年間。毎月積立。この条件で調べていきます。
今はこういった計算は探せばありますから探してみましょう。
- 金利が3%だと、月々約3万6千円。ちょっと3万6千円はキツイな。では…
- 金利が7%だと、月々約2万9千円。もうちょっと下げたいな。では…
- 金利が10%だと、月々約2万5千円。これぐらいならなんとかなりそうな。
この結果、なんとか2万5千円を積み立ててればいいんだな。でも10%の預金金利なんてないから、投資信託かな。よし投資信託を購入してみよう。証券会社の投資信託を探します。
投資信託を探す
金利、つまり期待収益率が10%の投資信託を探すのです。そして「ボラティリティ」、つまり「標準偏差」をみます。10%ということは、それなりに「期待収益率」が高いので、「ボラティリティ」が大きくなってしまうことを覚悟しなければなりません。
ただ、期間が長ければ長いほど、「期待収益率」に近い結果が得られますから、10年間は使わずにしっかりと貯めながら運用することです。「ボラティリティ」も「期待収益率」より小さいものを選べば、それほど大きな損失にはならず、10年後の500万円は用意できるでしょう。
投資信託の場合は、運用レポートというものが出されているはずなので、それを見て、「期待収益率」や「ボラティリティ」を確認し、投資信託を購入します。そうするとおおむね10年後には目標の500万円というリターンが得られるようになります。
最近、投資信託が売れていることもあって、投資信託に関することがよく話題になっています。投資信託は確かに様々なコストがかかりますが、要はコストはかかってもそれ以上のリターンがあれば、問題はないはずです。ただ、手数料は取られ、損をさせられるならば、投資信託を購入する意味はありません。
でもどれを選べばいいのかわからないという悩みを持っていることと思いますので、「期待収益率」と「ボラティリティ」を使って、投資信託選びをすれば、自分に合った投資信託を探すことができると思います。あまりこういうことを言ってしまうと、私のような専門家のところに相談が来なくなってしまうことがあるので、心配です。
ポートフォリオとは?
いよいよポートフォリオの話です。それぞれの投資対象が持つ「期待収益率」と「ボラティリティ」は過去の実績から計算して出せることがわかりました。ここでわがままな思いが出てきます。「ボラティリティ」を小さくしつつ、「期待収益率」をできるだけ高くすることはできないのか、と。詳細な計算は紹介しませんが、これができるのです。それが「ポートフォリオ」なのです。
Aという投資対象のものとBという投資対象のものがあったとします。Aの期待収益率とBの期待収益率の加重平均値を求め、AのボラティリティとBのボラティリティの加重平均値を求めます。すると、AよりもBの方が「期待収益率」「ボラティリティ」共に高いとすると、A単独よりは「期待収益率」があがり、B単独よりは「ボラティリティ」が小さくなります。
ただ、このポートフォリオですが、何でもいいから組み合わせれば良いというものではありません。値動きが違うもの同士、「期待収益率」の動きが相反するもの同士を組み合わせた時に、その効果が最大限発揮されます。聞いたこともあるかもしれませんが、その関係を示す数値が「相関係数」と呼ばれるものです。
「相関係数」とは、相反する動きを定量化したものです。定量化とは、数値で表すことと理解して下さい。詳しい計算は覚える必要はまったくありませんが、その数値が意味するものは理解して下さい。
「1」から「-1」の間の数値で表されます。「1」は、完全に同じ動きをする場合を示します。AとBの動きがまったく一緒ということです。つまり、Aが上がる時はBも同じように上がり、Aが下がる時はBも同じように下がるということです。
「-1」はその反対で、まったく逆の動きをする場合を示します。Aが上がる時はBは下がり、Aが下がる時はBが上がるということです。「0」の場合は、まったく関係がないことを示します。Aの動きとBの動きに関連性がないということです。
相関係数が「1」のもの同士でポートフォリオを組んでも、「期待収益率」も「ボラティリティ」も単純に加重平均されたものになってしまうだけで、効果がありません。「-1」に近づいていくにつれ、「ボラティリティ」が小さくなり、ポートフォリオ効果が高くなります。
完全な「-1」のポートフォリオができた場合は、「ボラティリティ」がゼロになります。複数の投資対象のものをポートフォリオとして組む時には、相関関係をよくみて組み合わせる必要があります。ポートフォリオを組むと「ボラティリティ」が小さくなるということでした。
一方、「期待収益率」はどうなるかというと、加重平均値になります。つまり、「期待収益率」はそれぞれの投資対象の「期待収益率」の加重平均値になるのに、「ボラティリティ」は加重平均値よりも低くなるのです。
これが「リスクを低減して、一定のリターンを確保する」ということなのです。よく証券会社や銀行の窓口で言われているのは、こういうことなのです。理解できたでしょうか。
ポートフォリオの組み方
次に、では資産形成を行なう際には、何を組み合わせてポートフォリオを組めばよいのでしょうか。深く理解する必要がない方は、こう覚えて下さい。
「株式と債券は逆の動きをする」
これを覚えておけば、何を組み合わせれば良いのか、わかりますね。ただ、通常は、日本の株式と日本の債券だけでは、日本の状態が悪いと「期待収益率」が上がらないことになってしまうので、これに海外の株式と海外の債券を追加した、4つの種類の投資対象を組み合わせます。
方法として目指すべきは、「リスク」を減らして、「リターン」を大きくするということになりますね。言い換えると、「ボラティリティ」を小さくして「期待収益率」を高めるということです。大きな収益もほしいが、ブレが大きくなって、損失となる可能性も高くなるようではやはりよろしくない。期待する収益を実現するためにブレをできるだけ小さく、収益を実現するような組み合わせを考えなければいけない。それがポートフォリオと呼ばれている手法です。
次に問題になるのが、ではどういうポートフォリオを組めばいいのかということです。これは組み合わせと組み合わせる比率で決まります。様々な組み合わせ比率をグラフ上で表すと、楕円を3等分した形のようなものが出来上がります。
その中で、合理的な投資家が選択するであろう部分の集まりを効率的フロンティアと言います。このあたりは、実践するにあたっては、理解しなくても良いです。参考程度に聞いて下さい。
効率的フロンティア上のどこかの点でポートフォリオを組むべきことはわかりましが、もっと良い方法があると経済学者のトービン氏が言いました。それは無リスク資産とリスク資産を組み合わせることだと。つまり、株式と国債(または預貯金)を組み合わせればよいのだ、ということです。
株式のポートフォリオの効率的フロンティア上と、無リスク資産で構成される直線の接点が、最もよい組み合わせになると結論づけたのです。このあたりの詳しい理解は、実践方法だけを知りたいと思っている方には、本当に必要ないので飛ばしてかまいません。
導かれている結論が正しいのかどうか疑うことも、ある意味大切ですが、この理論でノーベル経済学賞を受賞しているのですから、普通の人が疑って、自分で証明するまで、確認作業をしてみるというのは、時間の無駄だと思います。もちろん、その理論の中身に非常に興味があって、自分なりにしっかり理解したいと言う方は、じっくり時間をかけて、その数式を自分でやってみて確認してみて下さい。
インデックスファンドについて
私たちが知りたいのは、何よりも結論であって、じゃどうしたらいいの?ということがわかればいいので、詳細な数式の理解は、飛ばします。株式のポートフォリオはどういう銘柄を組み合わせたポートフォリオが良いのだろうか。
この疑問に答を出したのが、ウィリアム・シャープ氏です。この方はマーコヴィッツ氏と共に1990年にノーベル経済学賞を受賞しています。CAPM理論と呼ばれるもので、ここでは結論だけを言います。最終的な結論としては、市場が効率的ならば、一番良い効率的ポートフォリオは、株式市場全体を縮小したものである、と。
つまり株式市場に上場されている銘柄をすべて同じ割合だけ保有したポートフォリオを組めば良いということです。これって、なんだかわかりますかね?聞いたことがあると思うのですが、そうです、インデックスファンドです。
「日経225」とか「TOPIX」などで、表されている株式市場全体を表す指数を聞いたことがあると思います。よくニュースで言われている「今日の日経平均株価は…」と言われる、あの株価のことです。インデックスファンドというのは、その株式市場全体の指数に連動するように、設計された投資信託のことです。
ノーベル経済学賞を受賞した、理論が教える資産運用の方法は、インデックスファンドを購入することだったのです。ノーベル経済学賞を取った、資産運用の方法というのは、インデックスファンドを買うことだということは非常に衝撃的です。
あれこれと株式の銘柄選びに悩んだり、個別の銘柄の分析をしたり、チャートを見て、売り買いを頻繁にしたりする必要はまったくないということですから。ただ、前提は市場が効率的であるということがあります。
確かに効率的ではあるのでしょうが、完全に効率的ではないことも確かです。それはやはり所詮人間が行なっている活動なので、時と場合によっては、行き過ぎることや偏った状況が生まれることがあるからです。そういう状況を人より早く見つけ出し、そこに投資すれば大きく儲けることもできるのでしょう。市場の歪みを見つけて投資することです。
でもそれは非常に難しい方法であることは確かです。個別の銘柄を検討することは、そうした歪みがある状況を見つけ出すことです。そういうことをファンドマネージャーやアナリストなどのプロ中のプロ達がしのぎをけずって見出そうとしているのです。そこに勝機を見出せるならば、個別の銘柄を売買するトレードも良いかもしれません。
しかし、その中で儲かる人は5%とか2%と言われています。その狭き門に入る自信がある方は、挑戦してみることもよいでしょう。そうでない方は、やめた方がよいでしょう。たいていというかほとんどの方は、夢破れ、資産の多くを失って市場から退場していくことになるからです。
会社員の資産形成
私自身もいろいろなことをやって経験してきていますが、一般の会社員が資産形成を考えるのであれば、トレードをすることはやめた方がよいと思います。その理由は、何よりもそのことにエネルギーを取られ過ぎてしまうからです。
銘柄の選択や銘柄の検討、株価の上げ下げに一喜一憂することは、やってみればわかりますが、楽しいです。そしてだんだんとのめり込んでいってしまうのです。そうすると日中から株価が気になり、本業に身が入らなくなってしまいます。
人間が一日で使えるエネルギーは限りがあります。トレードにエネルギーを使ってしまえば、その分他から持ってこなければいけません。トレードにエネルギーを使えば、本業で使えるエネルギーが減ってしまいます。本業で使えば、より多くの収入を得る可能性が高いものをわざわざ他のことで使ってエネルギーを無駄使いする必要はありません。
では、本業にすべてのエネルギーを使えばよいのかというと、そこに問題があります。本業とはいってもいつかは働けなくなるか、大幅に収入が減る時期が必ずきます。その時のために資産形成はしなければいけないのです。そのための最低限のことはしなければいけません。
そこは自分で勉強し実践するか、その時間を節約したいかもしくは自分でやる自信がない場合は、信頼できる専門家に依頼することです。何事も等価交換の法則を忘れてはいけません。何かを得るためには同等の代価が必要です。
自分の時間を投じて勉強するか、その時間をお金を払って専門家にやってもらうかの選択は自由ですが、お金もかけず自分の時間も使わないということは、仮にそういう方法があったとしても、きっと大きな代価を払うことになるでしょう。








